眠りの冬支度
日暮れまでの時間が短く、夜が長い冬。寒さが厳しい夜を快適に眠るにはどうすればよいのでしょう。
1.冬は睡眠時間が長くなり、生体リズムが後退しやすい。
睡眠の長さは季節によって変わることが知られています。日照時間が短い冬に長くなり、日照時間が長い夏に短くなる傾向が見られます。就寝時刻は季節によってさほど変わりませんが、起床時刻は夏よりも冬の方が遅くなるとされます。
朝の体温上昇が冬は夏に比べて遅くなります。夏は朝早くから強い光を浴びるので、生体リズムが前進するためだと考えられています。冬は体温上昇の時刻が後退するので、目覚めの時刻も遅れやすいのです。起床時刻の季節差は気温の変化にも関係していると思われます。冬の朝は寒く、なかなか布団から抜け出せません。
季節の変化は気分にも影響を与えます。秋から冬は気分の落ち込みや不安が起こりやすくなります。季節性うつ病には、不安、過眠、過食などの症状が見られます。通常は春になり日照時間が長くなると自然に元に戻ります。
冬は夜明けが遅く、目が覚めにくいため、朝、雨戸やカーテンを閉め切って部屋を暗いままにしておくと、生体リズムが乱れやすくなります。毎朝、出来るだけ定刻に起き、起床3時間以内に太陽の光が当たる場所で30分以上過ごすように心掛け、起床後は明るい窓際で過ごすとよいでしょう。
2.冬の寝室に温度差対策を。
冬に寝心地のよい寝室の温度は16~19℃。しかしながら、日本では寝室を暖房する人は少なく、気温が下がり過ぎることがあります。特に高齢者はその傾向が見られます。寒いと交感神経の活動が高まるうえ、眠る前に手足からの放熱が進みにくい。そうなると、寝付きが悪くなったり、安眠が妨げられたりすることがあります。厚手のカーテンで窓からの冷気を防いだり、寝室にも暖房を入れたりして10℃以上に保ちたいところです。
高齢になると眠りの途中で目が覚めやすくなり、夜間にトイレに向かう回数が増えます。そのとき、温まった寝床から出て、寝室、廊下、トイレなどの冷えきった空気に急にさらされると、温度差で心筋梗塞や血管障害などの発生リスクが高まることが指摘されています。寝室からトイレまでの経路は急激な温度差を少なくする工夫をし、寝床を離れるときは暖かいものを羽織るようにしましょう。
3.冬の寝具の選び方
寒さ対策に掛け布団を重ねる方も多いと思いますが、あまり得策とは言えません。掛け布団よりも敷き寝具から熱が逃げていくからです 掛け布団だけでなく、敷き寝具にも保温性の高いものを使用することが冬の安眠のポイントです。保温性の高いキャメル、羽毛などの素材の敷き寝具を用いるなどして、敷き寝具からの放熱を防ぐ対策を考えるとよいでしょう。
掛け布団は暖かくて軽いものをお勧めします。重いと寝返りがうちづらく、安眠を妨げる原因になります。また、隙間風が入り込まないようにフィット性の高いことも重要なポイント。軽さ、保温性、フィット性を考えると、羽毛以上の素材はありません。ただし、羽毛には善し悪しがあるので判断は慎重に。
一方、電気毛布を朝までつけて眠るのはお勧めできません。電気毛布などで人工的に熱を加え続けると、寝床の中の温度が上がり過ぎてしまいます。そうなると、睡眠中に体温が下がりにくくなり、熟睡できなくなります。そのうえ、身体から水分が多く放出されるので、喉や粘膜が乾燥したり、皮膚が潤いを失ったりします。電気で加温するときは、あらかじめ寝床を暖めておくにととどめ、寝床に入ったらスイッチを切るようにしてください。
足が冷たいと寝付きが悪くなりがち。その場合は安眠用のソックスを履くとよいでしょう。締め付けがなく、吸放湿性の高いものがお勧めです。
背中と足元をしっかり保温、室内を適温に保てれば、掛け布団を重ねる必要がなくなります。掛け布団の重さから解放されるので、さらに快適に眠れるようになるでしょう。