化学物質と寝具
人間が作り出した化学物質が生命に与える潜在的な危険性は予想がつきません。睡眠中に体を覆う寝具の安全性はどうなのでしょう。
1.化学物質が原因となるシックハウス症候群
新築や改装後の住宅で目がチカチカするなどの体調不良を引き起こすシックハウス症候群。頭痛、のどの痛み、鼻炎、吐き気、めまい、皮膚炎などの症状があるとされます。一般住宅だけでなく、新築の幼稚園や学校へ通う子供たちがシックスクール症候群と判断されたケースもあるようです。
原因は建材から発生する揮発性化学物質。厚生労働省はホルムアルデヒド、トルエンなど有害物質の指針値を示し、予防や対策について発信しています。
2.繊維製品に使用される化学物質と安全性
世界中の化学物質のうち、繊維の生産に使用される割合は25%ともいわれており、繊維製品には多くの化学物質が使われています。素材から糸を引き、布が織られ、染色加工され、製品となって店頭に並ぶまでの段階で、様々な加工がされています。
例えば、ホルムアルデヒドには顔料プリントの固着剤の用途もあります。また、化学繊維だけでなく綿や毛のような天然繊維も加工の工程で薬品を用います。綿を刈り取る前には枝を枯らす目的で薬品が大量に散布されます。
環境に厳しい欧州では認証機関で安全性を認められた繊維製品が普及しています。認証機関の中で最も権威あるのが「エコテックス国際共同体」です。
欧州をはじめ日本等の各国の試験研究機関が加盟する「エコテックス国際共同体」は、アパレルや寝具だけではなく繊維製品全般に関する安全性の規格を定めています。人体に有害な物質の使用を禁止、または制限値を設定し、基準に合格したものだけに認証ラベルの使用を認めています。
3.エコテックス認証の寝具
試験項目は発ガン性、アレルギー誘発性染料のほか、ホルムアルデヒド、農薬、塩素系フェノール、抽出可能重金属、揮発性物質放出量など。寝具製品がエコテックス認証を受けるためには、生地、中わたはもちろん、縫い糸、品質ラベル、織ネームなど、すべての素材が検査に合格し、糸一本に至るまで安全なことが必要とされます。
寝床内気候とは、掛け布団と敷き寝具によって作り出される小さな空間の状態のこと。寝床内は四季を通して、温度33±1℃、湿度50±5%ぐらいが快適だとされます。温度・湿度と同様にチェックしたいのは、寝床内の化学物質に対する安全性。掛け布団、敷き布団、シーツ等の寝具が安全であることは、寝具選びの重要なポイントです。